暗号資産ってどんな投資?株との違いは?初心者向け暗号資産投資ガイド

近年、SNSやニュースで見聞きする機会が増えた暗号資産。友人や同僚から「暗号資産を買った」と聞いて、興味を持った方もいるでしょう。

暗号資産は投資対象のひとつとして話題になっていますが、投資手法として、暗号資産投資が最適か否かはまた別の話です。

本記事では暗号資産の概要を整理し、暗号資産投資と株式投資との違いを解説します。本当に暗号資産が自分に合った投資対象なのか、正しく見極めていきましょう。

目次

暗号資産とは

暗号資産はインターネット上でやりとりできる「デジタル通貨」です。仮想通貨と呼ばれていましたが、資金決済法の改正により2020年5月から「暗号資産」に呼称が統一されました。

まずは暗号資産のしくみや通貨としての位置づけを整理していきましょう。

暗号資産のしくみ

多くの暗号資産はインターネット上で情報を管理する技術である「ブロックチェーン」を使って運用されています。そのためお札や硬貨といった実物を持ちませんが、日本円や米ドルなどのお金と換えられる価値を持ちます。

資金決済法における暗号資産の定義をみてみましょう。

(1)不特定の者に対して、代金の支払い等に使用でき、かつ、法定通貨(日本円や米国ドル等)と相互に交換できる

(2)電子的に記録され、移転できる

(3)法定通貨または法定通貨建ての資産(プリペイドカード等)ではない

引用:暗号資産(仮想通貨)とは何ですか? : 日本銀行 Bank of Japan

国や中央銀行が発行する通貨(法定通貨)ではないが、法定通貨と交換でき、決済にも使えるとされています。

また、Suicaやwaonなどの電子マネーには特定の運営会社(JR東日本やイオン等)が存在しますが、基本的に暗号資産には中央的な管理者が存在しません。その代わりに暗号資産の利用者がブロックチェーン上でデータを管理・監視するしくみがあります。

法定通貨としても使われる暗号資産

日本の法令では暗号資産は法定通貨として認められていませんが、南米のエルサルバドルは様子が異なります。

同国は通貨事情や財政的な理由から、2021年に世界で初めて暗号資産(ビットコイン)を法定通貨として採用しました。ビットコイン用ATMを250ヵ所設けるなどして普及を促していますが、実際の普及率は10%未満に留まっている状況です。また国際通貨基金(IMF)も「リスクが大きい」として使用をやめるように求めています。

一方、同国のブケレ大統領は強気の姿勢をみせており、今後の動きが注目されています。

代表的な暗号資産

2023年度の時点で数万種類の暗号資産が存在するといわれていますが、なかでも取引額が多く、代表的な通貨がビットコイン、イーサリアム、リップルの3種類です。それぞれの特徴をみていきましょう。

ビットコイン (Bitcoin:BTC)

2009年に誕生した世界初の暗号資産がビットコインです。創設者は「サトシ・ナカモト」という匿名の人物またはグループで、未だにその正体は不明です。

それまで手間や費用がかかっていた国際送金がわずか10分程度で完了するなどの利便性が評価され、暗号資産といえばビットコインを想起させるほどポピュラーな通貨となりました。

直近ではトランプ次期政権のもとで取引が活発になるとの期待感から2024年12月4日に初めて1BTC=10万ドル(日本円でおよそ1,500万円)を超え、1ヵ月で約40%の上昇をみせています。

出典:Trading Viewより 2024年12月時点。

イーサリアム(Ethereum:ETH)

イーサリアムは、厳密にいうと送金システムやゲームなどを作成できるプラットフォームのことを指します。イーサリアム内のサービスを使う料金や投資対象として、暗号資産の「ETH(イーサ)」が使われます。

ビットコインが決済や取引を目的に開発されたのに対して、イーサリアムの開発はアプリケーションやプログラムの設計を目的としており、2015年にリリースされました。

現在は金融やゲーム、アートなど様々な分野で活用され、イーサもビットコインに次ぐ世界第2位の取引額を誇ります。

また、イーサの値動きの傾向はビットコインと似ています。

出典:Trading Viewより 2024年12月時点。

リップル(Ripple:XRP)

リップルは国際送金を効率化するために開発された暗号資産です。ビットコインも高速な国際送金を実現しましたが、リップルはより速く低コストで国境をまたいだ送金をおこなえます。「日本円-リップル-米ドル」といった形で、通貨どうしの橋渡しをする「ブリッジ通貨」として機能しています。

なお、多くの暗号資産が発行体を持たないなか、リップルについてはアメリカのリップル社が発行・管理をおこない、ブロックチェーンも使っていません。特定の管理者の存在から、運営の意思決定が迅速な点も特徴です。

リップルもまた、トランプ次期政権のもとでの取引活発化や、数年前から続く米国証券委員会との訴訟が落ち着くのではとの期待から、2024年11月末に急騰しています。

なお、この法的争いはリップル社がリップルの販売によって資金調達したことを米国証券委員会が問題視したことに端を発したものです。トランプ氏のもとで暗号資産推進派の委員長に交代すれば提訴が取り下げられるとの見方が広がっています。

出典:Trading Viewより 2024年12月時点。

暗号資産投資と株式投資のおもな違い

暗号資産への投資は値上がり益を得ることです。その点は株式投資も似ていますが、

両者は値動きや配当金、法規制など異なる部分も多くあります。ここではおもな違いを5つ紹介します。

価格変動の大きさ

暗号資産は株式よりも値動きが激しい点が特徴です。1日で価格が倍になる、あるいは半値になる可能性もあります。暗号資産は歴史がまだ浅く、市場が成熟していないことや法規制が整っていないことが原因です。小さな取引でも、価格に大きな影響を与えるケースもあります。

一方、株式ももちろん価格は変動しますが、長い歴史と規制によって、暗号資産にくらべれば一定の安定性が保たれています。

投資の世界では、価格変動の大きさを「リスク」といいます。暗号資産は株式を含む数ある投資対象のなかでもリスクが高く、老後資金の準備といった長期的な資産形成には向きません。

一般的にはリスクに比例して期待できるリターンも大きくなりますが、「暗号資産への投資はギャンブルに近い」と指摘する専門家がいるほど注意が必要とされています。

配当の有無

株式投資では、値上がりのほか配当金も利益となります。半年または年に1度、企業が投資家に利益を還元するもので、利回りは年間数%程度が一般的です。業績が悪ければ減配や無配となることもありますが、この配当金を目的に株式を購入する投資家もいるほどです。

一方、暗号資産には配当金はありません。そのため、買った値段よりも高い値段で売却して値上がり益を得ることが暗号資産投資の目的となります。

最低投資金額

株式も暗号資産も、銘柄ごとに価格が異なります。ただし株式は基本的に100株単位で購入するため、1株1,000円の銘柄なら10万円(手数料を考慮せず)が必要です。なかには1株1,000円以下の銘柄もありますが、数千円程度の銘柄が多くみられます。したがって、株を買うなら数十万円の用意が必要でしょう。

その点、暗号資産は数百円から購入できます。500円から購入できる取引所もあり、たとえば1単位1,500万円するビットコインでも、0.00003BTCといった形で1通貨単位以下でも保有できます。

法規制の整備

株式市場は長い歴史があり、日本だけでなく各国で厳格な規制が整えられてきました。

たとえば上場企業は決算情報や財務情報の開示を求められるほか、インサイダー取引や市場操縦に対して厳しい規制があります。

その反面、暗号資産は2009年に誕生したビットコインが世界初ですから、歴史はまだ15年ほどです。世界各国にくらべて法整備が進んでいるといわれる日本でも、株式にくらべればまだまだです。今後、新しい政策や規制が生まれれば暗号資産の市場にも大きな影響を与える可能性があり、今よりも投資しやすい環境へと変わっていくかもしれません。

課税のしくみ

株式の売買で得た利益や配当金には20.315%の税金が適用されます。売買で得た利益については年末調整の対象外のため、本来は会社員でも確定申告が必要です。しかし「特定口座(源泉徴収あり)」という口座種別を選択すると、確定した利益から税金が天引きされるため確定申告の手間が省けます。

そのほか、最近人気が高まっているNISAは株式の売却益や配当金が非課税になる制度です。

一方、暗号資産の売買で得た利益には、所得に応じて異なる税率で課税(総合課税 雑所得区分)されます。暗号資産で得た利益が20万円を超えた場合は確定申告が必要です。特定口座やNISAのようなしくみは暗号資産投資にはありません。

ご参考:暗号資産等に関する税務上の取扱い及び計算書について(令和5年12月)

暗号資産に投資する方法

実際に暗号資産を購入するには大きく4つのステップがあります。順を追ってみていきましょう。

1. 購入する暗号資産を決める

暗号資産交換業者によって取り扱っている暗号資産が異なります。購入する通貨をあらかじめ決めておきましょう。

おすすめは取引額の多い暗号資産です。暗号資産は値動きが激しいと先述しましたが、それでも取引額が多ければ急激な値動きをしにくくなるためです。

先ほど紹介したビットコインやイーサリアム(イーサ)、リップルはいずれも世界的に取引額が多く、日本においてもこの3種類がトップ3を占めています。

2. 暗号資産交換業者を決める

次に、購入予定の暗号資産を取り扱っている暗号資産交換業者のなかから、口座開設先を選定します。

ビットコインやイーサ、リップルなどメジャーな暗号資産であれば取り扱っている業者が多いため、どこで口座を開設するか迷ってしまうかもしれません。

その場合は、金融庁に登録されていて、なおかつ取引や出金の手数料の安い業者を選ぶとよいでしょう。

金融庁の登録を受けている業者は、金融庁のWebサイトで確認できます。(「金融会社」の部分に記載されています。)

免許・許可・登録等を受けている業者一覧 : 金融庁

3. 暗号資産交換業者で口座開設する

口座開設はインターネット上でおこなえます。マイナンバーカードや運転免許証などの本人確認書類を用意して手続きを進めましょう。

暗号資産交換業者(取引所)の公式ホームページから口座開設のページへ移動して氏名や住所、電話番号といった個人情報を入力、本人確認書類をアップロードしていきます。

最短の場合、即日で口座開設が完了する業者もありますが、通常は数営業日かかるところが一般的です。

4. 暗号資産を購入する

口座を開設できたら必要な資金を入金し、購入の注文を出しましょう。暗号資産の口座への入金は銀行振込のほかコンビニからもおこなえます。

大切なことなので繰り返しますが、暗号資産はハイリスクな投資です。半値や1/3に下がっても後悔しない範囲の金額で購入するようにしてください。

入金を終えたら、アプリやブラウザで購入希望価格や注文量などを入力して発注します。

暗号資産投資の注意点

近年、暗号資産に関してマッチングアプリを使った詐欺も発生しています。こうしたトラブルを避け、暗号資産投資で後悔しないためにも、2つの注意点を必ず押さえておきましょう。

詐欺やトラブルが多い

マッチングアプリなどで出会った相手に「必ず儲かる」などと持ちかけられて暗号資産に投資したが、出金できないといった詐欺案件が発生しています。

投資の世界で「絶対儲かる」ものはありません。おいしいと思える話は怪しいと思ったほうがよいでしょう。

また、暗号資産交換業者は金融庁への登録が必要です。口座開設をしようとしている業者が無登録でないかどうか、必ず事前に確認しましょう。

価格変動が大きい

暗号資産の値動きの大きさについてはこれまで述べてきたとおりです。株式にはストップ安(ストップ高)といって、1日で一定以上の値動きをしないような制限がありますが、暗号資産にはこうした制限も今のところありません。

例として、日経平均とビットコインの値動きの推移をみてみましょう。

出典:Trading Viewより 2024年12月時点。

青いラインが日経平均、赤いラインがビットコインの動きを示しています。暗号資産のなかでも比較的値動きが安定しているといわれるビットコインでも、日経平均にくらべるとかなり大きく価格が動いています。

利益を出したい場合はもちろん、大きな損をしないためにも、こまめに値動きをチェックして売りそびれないことが重要です。

まとめ

暗号資産への投資は、一部専門家が「ギャンブルに近い」と指摘するほどリスクの高いものです。しかしながら、その技術やしくみなど将来性には期待できるところも十分あります。

暗号資産に投資するなら、長期的な資産形成を目的とせず、身の丈にあった金額で慎重に始めましょう。

老後のために長期目線で資産を築きたい方には、ほかに選択肢があります。こちらの記事では12種類の投資手法を紹介しているため、ぜひ参考にしてください。

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