投資初心者の中には「投資信託」と「ETF」の特徴や違いがわからず、迷っている方も多いのではないでしょうか?
本記事では、初心者目線で、投資信託とETFの違いやそれぞれの魅力、選び方を徹底解説します。
投資信託とETFとは?それぞれの特徴を簡単に紹介
はじめに、投資信託とETFの基本的な特徴を解説します。
投資信託はプロに運用を任せる商品(公募投資信託)
投資信託(公募投資信託)は、多くの投資家から集めた資金をもとに、運用の専門家が株式や債券などに分散投資を行う金融商品です。初心者でも手軽に始められる仕組みで、少額から購入でき、長期運用に適しています。
特に手間や時間をかけずに資産運用をしたい方に人気があり、運用や管理はすべてプロに任せられる点が特長です。そのため、投資先の選定やリバランスなどの手間がかからず、初心者でも安心して利用できます。一方で、プロが運用するため信託報酬や購入時手数料などのコストが発生します。
ETFは市場で取引できる投資信託(上場投資信託)
ETF(上場投資信託)は、株式のように証券取引所でリアルタイムに売買できる投資信託の一種です。従来のETFは株価指数などに代表される指標への連動を目指す運用を行うインデックス型が主流でしたが、昨今の投資家の多様なニーズに応えるため、アクティブ型のETFも増えています。。
ETFは、投資信託と比べて取引コストが抑えやすいです。一般的に信託報酬は投資信託よりも割安で、売買時には市場価格で取引が行われます。価格変動リスクが大きく、初心者にはややハードルが高く感じる部分もあるでしょう。
投資信託とETFの違いは?4つのポイントをチェック
投資信託とETFの違いを理解するために、ポイントを見ていきましょう。この比較によって、自分に合った商品選びがしやすくなります。
運用方法
投資信託では主にファンドマネージャーが市場動向を分析し、積極的に資産配分を変える「アクティブ運用」が行われるケースが多くあります(中にはパッシブ運用の投資信託もあります)。銀行、証券会社、運用会社などを通じて購入し、1日に1回算出される基準価額で売買が行われるためリアルタイムでの取引はできません。なお、売買注文が成立する日を約定日といい、約定日における基準価額で取引されます。約定にかかる日数はファンド毎に異なりますが、一部の海外投資信託を除き、多くは申込当日が約定日となるケースが多いです。
ETFでは市場の特定指数に連動する「パッシブ運用」が多くのケースで行われます。株式と同じように証券取引所で取引され、市場価格で証券会社を通じて売買されます。また指値注文が可能で、売買の自由度が高いのが特徴です。信託報酬や取引手数料が投資信託よりも低い場合が多く、コストを抑えやすい一方、売買の取引頻度が増えると結果的に手数料がかさむので注意しましょう。
ご参考:投資信託とETFの手数料目安
項目 | 投資信託 | ETF |
購入時手数料/回 | 0%〜3% | 売買手数料として数百円〜数千円 |
信託報酬/年 | 0.1%〜2% | 0.1%〜0.2% |
解約(売却)時手数料/回 | 0.1%〜0.5%(信託財産留保額) | 売買手数料として(数百円〜数千円 |
売買価格 | 基準価額(1日1回更新) | リアルタイム価格(需給で変動) |
価格の仕組み
投資信託とETFにおける価格の仕組みについて説明します。
投資信託では「基準価額」によって売買取引がされます。これは投資信託の1口あたりの価格を指し、運用する資産(株式、債券、不動産など)の価値を基に毎営業日1回算出、公表されます。株式のようにリアルタイムで価格が変動するわけではなく、運用会社がその日の純資産総額÷発行済み受益権口数で決定します。
「純資産総額」とは 投資信託が保有する資産の総価値から、運用コストや負債を差し引いた金額であり、「発行済み受益権口数」とは投資信託の発行済み口数です(購入や解約に応じて増減します)。
<計算例>
・純資産総額:1,000億円
・発行済み受益権口数:1億口
基準価額:(1,000 億円÷1 億口=)1,000円
また基準価額は以下の要因によって変動します。・投資対象の価値変動:投資信託が保有する株式や債券、不動産などの価格が上昇すれば基準価額も上がり、価格が下落すれば基準価額は下がります。
・分配金の支払い:投資信託が分配金を支払う場合、その金額分だけ基準価額は下がります。
・運用コスト(信託報酬など):投資信託の運用にかかるコストは基準価額から差し引かれるため、これも基準価額の低下要因となります。
・為替レートの変動:外国資産を保有している投資信託の場合、為替レートの変動も基準価額に影響します。
ETFでは「市場価格」と「基準価格」という2つの価格概念があり、投資家は割高か割安かの判断材料として「基準価格」を参考にしながら、実際には「市場価格」で売買取引をします。それぞれの価格概念についてみていきましょう。
「市場価格」とは実際にETFが証券取引所で取引される際の価格のことです。価格は投資家の需要と供給によって決まります。買いたい人が多いと価格は上がり、売りたい人が多いと価格は下がります。また価格は市場の取引時間中、常に変動します。投資家の心理や市場の状況により、基準価格とは異なる価格で取引される場合があります。
「基準価格」とはETFが保有する資産(株式、債券など)の総価値を基に計算される1口あたりの理論価格です。 基準価格は(ETFの総資産価値−負債)÷発行済み口数の計算式で導き出されます。一般的に1日に1回、ETFの運用会社によって計算・公表され、ETFが保有する資産の価値(例: 株式市場全体の動き)が直接反映されます。
市場価格と基準価格の関係として、「プレミアム」と「ディスカウント」という概念があります。市場価格が基準価格より高い場合、プレミアム(割高)、市場価格が基準価格より低い場合、ディスカウント(割安)と呼びます。
「プレミアム」「ディスカウント」が生じる理由としては主に下記が挙げられます。
・需給バランス: 一時的な投資家の売買行動によって発生。
・流動性の低下: 売買注文が少ないと価格が基準価格から乖離しやすくなる。
・市場変動: 特定のイベントで市場全体が急激に変動した場合に発生。
ETFの市場価格が基準価格と乖離している場合、裁定取引が働き、その乖離が縮小する傾向があります。
分配金と税制
投資信託とETFは、分配金や税制についても違いがあります。
投資信託は、得られた収益を再投資する「自動再投資型」のケースが多いです。そのため、分配金を使わずに資産を増やす長期運用がしやすくなります。また、NISAのつみたて投資枠など税制優遇を利用できる商品が豊富で、初心者が税金の負担を軽減しやすいのが特徴です。
一方、ETFは分配金を現金で受け取る形式が主流です。そのため、収益の受け取り方が自由で、自分のライフスタイルに合わせて運用できます。ただし、ETFの分配金は受け取るたびに20.315%(所得税15.315%、住民税5%)が課税されます。NISA口座を使えば非課税で運用でき、再投資も効率的に行えるため、税制を意識して計画的に運用しましょう。
投資対象や商品の特色
投資信託とETFは、投資対象や商品の種類にも違いがあります。
投資信託は、国内外の株式や債券、不動産などさまざまな資産クラスに投資できる点が特徴です。1つの商品で複数の投資対象を横断的に組み合わせたバランス型ファンドもあり、リスクを抑えながら分散投資を行いやすい設計になっています。
ETFは特定の指数に連動する商品が多く、テーマや地域に特化したものが充実しています。例えば、アメリカの株式市場全体や特定の業界を対象にしたETFなど、自分の興味や目的に応じて選べる点が魅力です。ただし、ETFによっては市場での取引量が少なく、売買のタイミングや希望価格での取引が難しくなる場合があります。そのため、購入前には特に売買の流動性(市場での取引量)に気をつけましょう。
投資信託とETFのメリット・デメリットは?
投資信託とETFには、それぞれ特有のメリットとデメリットがあります。
投資信託のメリット・デメリット
投資信託の最大のメリットは、運用の専門家に管理を任せられる点です。投資初心者でも少額からスタートできるうえ、複数の資産に分散投資が可能です。さらに自動再投資機能がある商品も多く、NISAのつみたて投資枠などの税制優遇を活用すれば、長期的に資産を増やす計画が立てやすいです。
一方で、信託報酬や購入時手数料がかかるため、コストがETFに比べて割高になるデメリットがあります。また、基準価額が1日に1回しか更新されないため、リアルタイムでの売買はできません。そのため、自身の売買タイミングで売買したい方にとってはデメリットとなるでしょう。
ETFのメリット・デメリット
ETFの大きなメリットは、リアルタイムで売買ができる点です。市場価格に基づいて取引できるため、タイミングを見ながら売買したい方には最適です。
また、先ほどもお伝えした通り信託報酬が投資信託よりも低めに設定されている場合が多く、コストを抑えて運用できる魅力もあります。さらに、特定の指数に連動するシンプルな商品設計が多いため、投資対象が明確で選びやすいのも特徴です。
一方で、売買の管理を自分で行う必要があり、運用に一定の知識と手間が求められます。また2つの違いの部分でも紹介しましたが、取引量が少ないETFは流動性が低く、希望する価格での売買が難しくなる場合があります。税金のタイミングや再投資の手間を考慮しなければならないことも注意点です。
それぞれのメリット・デメリットを比較
投資信託とETFのメリット・デメリットを比較すると、それぞれの特徴がより際立ちます。
投資信託は運用を専門家に任せられるため、初心者でも安心して始められる点が魅力ですが、コストが割高になりやすくリアルタイムの取引ができない点がデメリットです。
ETFではリアルタイム取引や低コストといった自由度が高い運用が可能ですが、運用の手間や税金の管理など自身による管理が求められる商品です。
投資信託 | ETF | |
メリット | ・少額から投資可能で、長期的な資産形成に向いている ・プロが運用するため、分散投資が容易 ・自動再投資が可能で複利効果が期待できる ・基準価格で取引されるため価格変動の影響を受けにくい | ・リアルタイムで売買可能で、タイミングを選べる ・手数料が比較的安い(信託報酬が低い) ・市場での取引により透明性が高い |
デメリット | ・売買のタイミングを選びにくい ・手数料が比較的高い場合が多い ・投資対象が限られる場合がある ・解約に時間がかかることがある | ・短期的な価格変動の影響を受けやすい ・市場の流動性が低い場合、売買が成立しにくい ・市場価格が基準価格と乖離することがある |
投資信託とETF、それぞれに向いている人は?
投資信託とETFにはそれぞれ向いている人の特徴があります。自分の目的や運用スタイルを見極めて選ぶことが重要です。
安全志向で長期運用を目指す人には投資信託
投資信託は、リスクを抑えながら長期的に資産を増やしたい人に向いています。運用の専門家が資金を分散投資しながら管理するため、初心者でも安心して始められる点が特徴です。また、NISAのつみたて投資枠などの税制優遇制度を活用することで、資産運用の効率を高めることができます。
特に忙しくて運用の手間をかけたくない方や、専門知識に自信がない方にとっては、投資信託が最適です。少額から始められる商品も多く、自動再投資機能により時間をかけずに資産を増やす仕組みが整っています。これらの特徴から、初心者から中級者まで幅広い層に支持されています。
自分で運用管理をしたい人にはETF
ETFは、自分で売買のタイミングを管理したい人や、コストを重視して運用したい人に適した投資方法です。市場価格に基づいてリアルタイムで売買が可能なため、投資チャンスを逃さずに取引できます。また信託報酬が低めに設定されている商品が多いため、長期的な運用でもコストを抑えられるのが魅力です。
さらに、ETFは特定の指数やテーマに特化した商品が多く、自分の興味や投資の目的に応じた選択がしやすいです。一方で、取引にはある程度の知識が求められるため、運用に手間をかけられる人や、自分で戦略を立てて投資を進めたい人に適しています。特に中級者から上級者に支持される商品と言えるでしょう。
バランス良く取り入れるのもおすすめ
投資信託とETFはそれぞれ異なるメリットを持つ商品ですが、どちらか一方に偏る必要はありません。長期的に安定した成長を目指す部分には投資信託を、短期的な運用や特定のテーマ投資にはETFを活用するなど、目的に応じて使い分けられます。
例えばNISAのつみたて投資枠で投資信託を積み立てつつ、興味のある業界や地域に投資するためにETFを追加するといった運用方法もあります。このようにバランスの取れたアプローチを取れば、リスクを分散しながら投資の幅を広げられるでしょう。
投資信託とETFの違いを押さえて賢く選択しよう
本記事では、投資信託とETFの基本的な違いから、それぞれの特徴、メリット・デメリット、向いている人について詳しく解説しました。投資信託はプロに運用を任せて安定的に資産を増やしたい方に、ETFは自由度の高い取引で手数料を抑えたい方におすすめです。
またどちらか一方に絞る必要はなく、それぞれのメリットを活かして併用することで、運用の幅を広げリスクを分散させられます。自分の投資目的やライフスタイルに合った商品で資産運用を始めてみてはいかがでしょうか。まずは少額からでも挑戦して、資産運用の一歩を踏み出してみましょう。