投資信託のスイッチング完全ガイド

投資信託のスイッチング完全ガイド

投資信託は、多くの個人投資家にとって資産形成に役立つ有効な手段のひとつとなっています。しかし、そうした長期的な資産運用を行う中で、市場環境の変化や自身のライフステージの移り変わりに合わせて、保有する投資信託を見直す必要が生じることもあるでしょう。そういった際に活用したいのが「スイッチング」という仕組みです。この記事では、投資信託のスイッチングについて、基礎はもちろんメリットやデメリット、効果的な活用法まで徹底解説します。

目次

投資信託運用で見落としがちな「スイッチング」という選択肢

投資信託は資産形成の有効な手段として多くの方に活用されています。しかし、その運用をさらに効率的にすることができる「スイッチング」という仕組みをご存知でしょうか。

通常の売買と何が違うのか

皆さんは投資信託を運用していて、「市場環境が変化したので保有ファンドを見直したいけれど、売却と購入の二段階の手続きが面倒に感じる」や、「iDeCo(個人型確定拠出年金)で積み立てている商品を変更したいけれど、具体的な方法がわからない」といった経験はありませんか?実は、多くの投資信託やiDeCo(個人型確定拠出年金)などの運用商品では、「スイッチング」と呼ばれる、保有資産の入れ替えが可能な仕組みが用意されています。
スイッチングとは、簡単に言えば、現在保有している投資信託を売却し、同時に別の投資信託を購入する取引のことです。通常の売買では、まず持っているファンドを売り、その後で別のファンドを買うという2つの手続きが必要ですが、スイッチングでは一度の手続きでこれらを完結できます。

スイッチングを知らないことで失っている可能性のあるメリット

スイッチングを知らずに従来の方法で乗り換えを行っていると、いくつかの重要な機会損失をしている可能性があります。例えばそのひとつとして、手数料が挙げられます。スイッチングを利用すれば通常の売買に比べて手数料が低く抑えられる、あるいは無料となる場合があります。こういったスイッチングのメリットや注意点を理解する前に、まずは次章で、スイッチングの基本的な仕組みと目的について、より詳しく見ていきましょう。

投資信託の「スイッチング」とは?基本をわかりやすく解説

スイッチングはどのような時に使えるのか、活用シーンを考えてみよう

前章で触れたスイッチングについて、ここではその基本的な仕組みと活用シーンを解説します。

スイッチングの基本的な仕組みと目的

投資信託のスイッチングとは、前述したように保有している投資信託を売却し、その売却代金で同時に別の投資信託を購入する取引のことを指します。より詳細には、「同じ投資信託内でコースを乗り換える」パターンと「投資信託ごと乗り換える」パターンの、主に2種類の方法があります。いずれの場合にも、スイッチングの主な目的は、運用方針の変更や 、市場環境の変化への対応、リスク許容度の変化、為替ヘッジの有無の切り替えなどさまざまで、さらに言えば、積極運用から安定運用への切り替えなどにも活用できます。

では、「同じ投資信託内でコースを乗り換える」パターンと「投資信託ごと乗り換える」パターンという二種類についてそれぞれ具体的にイメージしてみましょう。まず前者の例としては、同じS&P500と連動する商品でも、為替ヘッジありのコースから為替ヘッジなしのコースに切り替える場合などがあります。また、安定した運用成績を狙うコースから積極的に高い利回りを狙うコースへの切り替えを行う場合なども該当します。
次に、後者のケースをより具体的に考えてみましょう。

一例として、「商品Aを100万円分、商品Bを100万円分」保有している状況を仮定します。スイッチングを利用することで、「商品Cを100万円分、商品Bを100万円分」保有している状態に変更することもできますし、「商品Aを50万円分、商品Cを50万円分、商品Bを100万円分」保有している状態にもできます。詳細な条件やルールについては各状況に応じて変化しますので注意深く確認するようにしましょう。

こういった乗り換えを行う際には、通常では「売却→代金確定→購入」という2段階の手続きが必要ですが、スイッチングではこれが一体化され、1回の注文で完結します。これにより、資産の入れ替えがスムーズに行えます。ただし、スイッチングの場合、一般的には金融機関が指定した複数の投資信託の中から乗り換え先を選ぶことになるので覚えておきましょう。

通常の売買やiDeCoの「配分変更」との明確な違い

スイッチングは、通常の売買やiDeCoの「配分変更」とは異なります。通常の売買では、売却と購入は別々の取引ですが、スイッチングではこれらが一体化されています。そのため手続きが簡素化され、手数料面でもメリットがある場合があります。また、iDeCoでは「配分変更」と「スイッチング」という似た手続きがありますが、それぞれ役割が異なります。「配分変更」は、今後の掛金で購入する商品の種類や割合を変更する手続きです。一方の「スイッチング」は、すでに積み立てた資産を別の商品へ乗り換えるための手続きです。現在保有している資産のリスクを減らしたい場合、iDeCoにおいては配分変更だけでは不十分な可能性があり、その場合にはスイッチングが必要となります。両者の違いを理解しないと、意図した運用見直しができない可能性があります。

スイッチングはどのような時に使えるのか

売却と購入を一連の流れで行えるスイッチングを利用することで、市場環境や運用方針の変化に応じた調整が行いやすくなります。具体的には、為替リスクへの対応や、株式型から債券型への切り替え、ポートフォリオのバランス調整、ライフステージに合わせた運用方針の見直しなど、さまざまな場面で活用できます。次章では、これらのメリットをさらに掘り下げていきましょう。

投資信託スイッチングの4つのメリット徹底解剖

前章の内容を踏まえ、スイッチングを活用することで得られる4つの具体的なメリットについて詳しく見ていきましょう。

メリット1:手数料を抑えて効率的に資産を組み換える

スイッチングの最も大きな魅力のひとつは、通常の投資信託の乗り換え(売却と購入)に比べて手数料が低く抑えられる、あるいは無料となるケースが多いことです。投資信託を購入する際には「購入時手数料」がかかるのが一般的ですが、スイッチングではこの手数料が免除されることが多くあります。例えば、投資信託Aを売却して投資信託Bを購入する場合、通常はAの売却時とBの購入時にそれぞれ手数料が発生します。しかしスイッチングを利用すれば、購入時手数料がかからないか、大幅に軽減されるため、コストを抑えてポートフォリオの調整ができます。

ただし注意点として、「信託財産留保額」という費用が売却時に差し引かれる場合があります。これはスイッチング特有のコストではなく、その投資信託を売却(解約)する際に発生するコストです。「スイッチング手数料無料」であっても、この費用の有無は確認しましょう。

メリット2:利益確定で大切な資産を守る

保有している投資信託の価値が上昇し、含み益が出ている場合に、スイッチングを利用してその利益を確定させる戦略も有効です。具体的には、値上がりした投資信託を売却し、値動きがより安定している商品(元本変動リスクが低い商品や債券ファンドなど)に乗り換えることで、運用成果をより確かなものにできます。投資信託運用では、含み益が市場急落で失われるリスクがあります。ある程度の利益が出た段階でその一部または全部を確定させることは、資産を守るための有効な手段です。相場好調時や目標資産額に近づいた際に、このメリットが活かされます。

もちろん、市場動向次第では、スイッチング先の商品に含み損が発生する場合もあります。しかし、より安定的な商品に乗り換えれば、その後の市場下落による資産減少リスクは軽減され、大切な資産を守ることができます。長期的な資産形成では、この「守り」の視点も重要です。

メリット3:為替ヘッジの有無を切り替える戦略

外国の株式や債券に投資する信託では、為替レートの変動がリターンに大きく影響します。スイッチングを利用すれば、為替ヘッジ「あり」のファンドと「なし」のファンドを切り替える戦略が可能になります。為替ヘッジとは、将来の為替レートをあらかじめ予約することで、為替の変動によって生じる外貨資産の価値の変動(円高・円安の影響)を抑えることです。例えばS&P500指数と連動するような運用性成績を目指す投資信託で考えてみましょう。米ドルでの基準価額が変わらない場合でも、為替ヘッジをしない場合は、円高になれば為替差損が、円安になれば為替差益が発生します。逆に為替ヘッジをする場合には、これらの為替をあらかじめ予約することになるので、為替リスクを低減することになります。このように、同じ投資対象でも、為替ヘッジの有無によって別の運用成績になります。スイッチングを活用すれば、このような為替戦略の変更も容易に行うことができます。

メリット4:運用方針やライフステージの変化に柔軟に対応

投資期間は長期にわたることが多く、その間に投資家自身の運用方針やリスク許容度、ライフステージ(就職、結婚、住宅購入、退職など)が変化するのは自然なことです。スイッチングは、こうした変化に対応しポートフォリオを最適化するための手段となります。例えば、運用開始時は積極的にリスクを取っていた投資家が、退職が近づくにつれてより安定的な運用を志向するようになるケースを考えてみましょう。このような場合、スイッチングで株式型ファンドの比率を減らし、債券型やバランス型ファンドの比率を高めるといった調整ができます。また、市場全体のトレンドの変化や特定の資産クラスへの見通しが変わった場合にも、スイッチングでポートフォリオを見直すことができます。これにより、常に自身の状況に合った資産配分を維持できます。

投資信託スイッチングの注意点とデメリット

前章ではスイッチングのメリットを解説しましたが、いくつかの注意点もあります。この章では、知っておくべき3つの主なデメリットを見ていきましょう。

デメリット1:スイッチングできる商品の選択肢が少ない場合がある

スイッチングの乗り換え先は、多くの場合金融機関が指定したラインナップからしか選べず、市場の全ての投資信託から自由に選択できるわけではないことに注意が必要です。例えば、今持っている「◯◯国内債券ファンド」から「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」に乗り換えたいと思っても、自分が利用している金融機関のスイッチング対象商品に「オール・カントリー」が含まれていなければ、その乗り換えはできません。

また、場合によっては、「〇〇バランスファンド 安定型」から「同じファンドの成長型」へのスイッチングのように、同一ファンド内のコース変更だけに限られている場合もあります。希望する商品がスイッチング対象に含まれていないと、運用にあたって予想外のリスクを負う可能性もあります。そのため、利用する金融機関のルールや商品ラインナップは事前に確認しておくことが重要です。

デメリット2:手続きに時間がかかり、価格変動リスクがある

これはスイッチングに限らず投資信託の取引全般に言えることですが、取引の完了までには数営業日かかることがあります。このタイムラグの間に市場価格が変動するため、申込み時点の価格で売買が成立するとは限りません。売却ファンドの価格下落や購入ファンドの価格上昇が生じると、想定より不利な条件でスイッチングが行われる可能性があり、特に市場が不安定な時期には注意が必要です。このため、スイッチングは短期的な市場の動きを捉える取引には不向きで、中長期的な資産配分の見直しなど、緊急性の低い場面での活用が望ましいでしょう。

デメリット3:信託財産留保額などの隠れたコストに注意

スイッチング自体の手数料が無料でも、売却する投資信託によっては「信託財産留保額」が差し引かれる場合があります。これは解約時に発生する取引コストを解約者が負担するもので、スイッチング手数料とは別物です。「スイッチング手数料無料」という言葉だけでなく、この留保額の有無も確認しましょう。また、スイッチング先の運用管理費用(信託報酬など)も比較・確認することが大切です。

まとめ

投資信託のスイッチングは、いくつかの注意点もありますが、手数料節約や利益確定など様々なメリットがあります。為替や市場の動向、ライフステージの変化など、常に変化し続ける資産運用環境の中で、スイッチングを新たな武器のひとつに加えてみませんか?

※投資は、お客様自身の判断と責任において行ってください。

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この記事の著者

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