「移動平均線の見方を知り、投資に活かしたい」と思っていませんか?移動平均線は多くの投資家が活用する有用なテクニカル指標ですが、正しい使い方を知らないと能力を発揮できません。そこで今回は、移動平均線の基本的な見方から実践的な使い方まで詳しく解説します。
この記事を読むと、移動平均線の基本的な仕組みが理解でき、トレンドの方向性や強さを見極められるようになります。初心者の方でも実践できる内容となっていますので、この記事を参考にしてご自身のチャート分析に移動平均線を取り入れてみてください。
移動平均線とは
移動平均線とは、チャートに表示される線グラフで一定期間の終値の平均値を繋いで表されます。

たとえば、5日移動平均線は、直近5日間の終値の平均を計算して、その値を線で結んだものになります。

移動平均線の特徴は、ノイズとなる相場の短期的な価格変動を平滑化して、トレンドの方向や勢いを可視化できることです。株価は日々上下に変動しますが、その細かい動きに一喜一憂していては、大きな流れを見失う可能性があります。ですが、移動平均線を活用すると相場のトレンドを的確に捉えやすくなるため、客観的な判断ができるようになります。
移動平均線の期間設定
移動平均線を使うときは、まず期間の設定をします。基本的に、チャートを確認できるアプリや投資サイトでは、時間軸(日足や週足など)に対して3つの期間(短期・中期・長期)が標準設定されている場合が多いです。これらの期間の設定は、自分好みに調整できるようになっています。移動平均線の日数に唯一の正解はありませんが、設定が定まっていない方は参考にしてみてください。
日足チャートで多くの投資家に使われる設定
期間 | 設定 |
短期 | 5日 |
中期 | 25日 |
長期 | 75日 |
週足チャートで多くの投資家に使われる設定
期間 | 設定 |
短期 | 13週 |
中期 | 26週 |
長期 | 52週 |
月足チャートで多くの投資家に使われる設定
期間 | 設定 |
短期 | 6ヶ月 |
中期 | 12ヶ月 |
長期 | 24ヶ月 |
株式市場では、1週間や1ヶ月などの時間的な区切りが意識されやすいです。そのため、表で紹介した期間が多くの投資家に設定されています。また、決算が3ヶ月ごとに発表されることも、本章で紹介する期間が注目される理由となっています。
なお、日足・週足・月足よりもさらに短い時間軸でも移動平均線は使えます。短期の時間軸に関しては、ご自身で加減しながら模索してみてください。
移動平均線の3つの見方
移動平均線の基本的な見方は以下の3つです。
● 移動平均線の向き
● 移動平均線の傾き
● ローソク足との位置関係
これらを理解すると、移動平均線から正しく情報を読み取れるようになります。
それぞれ解説します。
1.移動平均線の向き
移動平均線の向きをみると、相場のトレンドを把握できます。移動平均線が上向きなら上昇トレンド、下向きなら下降トレンド、横ばいならレンジ相場(ボックス相場)と判断できます。

移動平均線が明確に右上がりになっていれば、買い手が意欲的になっているため株を購入するのにふさわしい相場です。逆に、移動平均線が右下がりになっていれば、買い圧力よりも売り圧力が強く株を購入するのに適していない時期だといえます。
相場では、大きなトレンドに逆らった取引は「逆張り」と呼ばれリスクが大きいです。そのため、投資をする際は最初に移動平均線でトレンドの向きを確認するのがおすすめです。
2.移動平均線の傾き
移動平均線の傾きを観察すると、トレンドの強さがわかります。傾きが急であるほどトレンドの勢いが強く、緩やかであるほど弱いことを示しています。

移動平均線が急な角度で右上がりになっていれば、買いの圧力が強いことを意味するため値上がり益が期待できるタイミングだといえるでしょう。一方、傾きが徐々に緩やかになっている場合は、トレンドの勢いが弱まっているサインである可能性が高いです。
このような状況では、相場の転換点が近づいている可能性も考慮して投資について慎重に考える必要があります。移動平均線の傾きに注目すると、積極的に投資すべき時期なのか控える時期なのかを判断する助けとなります。
3.ローソク足との位置関係
ローソク足と移動平均線の位置関係からは、トレンド転換の可能性を読み取れます。基本的に、トレンドが転換するとき最初にローソク足が移動平均線を跨くことがほとんどです。たとえば、上昇トレンド中に移動平均線を上から下へ抜けた場合、トレンドが終わるときの最初のサインとなります。

逆に、下落トレンドの中でローソク足が移動平均線を下から上へ抜けた場合、下降トレンドが終わる可能性が高まります。
ローソク足が移動平均線を越えるタイミングを見逃さないことが、トレンド転換を早期に発見するために重要です。もし、ローソク足が移動平均線を跨いだ場合はトレンド転換するかもしれないので、警戒しながらチャートをみるようにしましょう。
移動平均線の使い方
移動平均線を使った具体的な売買タイミングの判断方法には、以下の3つがあります。
● ゴールデンクロス
● デッドクロス
● グランビルの法則
これらを理解すると、移動平均線を利用した取引ができるようになります。
ゴールデンクロス
ゴールデンクロスは「買いシグナル」として知られるサインです。短期の移動平均線が長期の移動平均線を下から上に抜けることを指します。

このシグナルは、短期的な買い手の勢いが以前の勢いを上回りはじめたことを示しています。ひとつの例ですが、5日移動平均線が75日移動平均線を下から上に抜けるときなどがゴールデンクロスです。
多くの投資家がこのシグナルを「買い」のタイミングとして注目しているため、実際に相場が上昇する可能性が高まります。ゴールデンクロスが発生した場合、上昇トレンドの初期段階である可能性が高いため、買いを検討する価値があります。
デッドクロス
デッドクロスとは「売りシグナル」として知られる警告サインで、短期の移動平均線が長期の移動平均線を上から下に抜けている状態です。

デッドクロスは、以前と比べて買い手より売り手の勢いの方が強くなりはじめたことを示しており、下落トレンドへの転換を意味します。
デッドクロスが発生した場合、保有している株式の売却や様子見を検討する判断材料となります。相場の下落は急激に進行することがあるため、デッドクロスには特に気をつけましょう。なお、ゴールデンクロス・デッドクロスについては、下記の記事で詳しく解説していますのでぜひ一読して理解を深めてみてください。
グランビルの法則
グランビルの法則とは、移動平均線と価格の関係から売買タイミングを判断する理論で、米国のアナリスト「ジョゼフ・E・グランビル」が考案したものです。グランビルの法則は、8つの売買サインで構成されています。

具体的には、買いサイン4つと売りサイン4つからなります。
買いのタイミングとして注目したい4つのパターン
- 株価が移動平均線を下から上へと突破したとき
- 株価が一時的に移動平均線を割り込んだが、すぐに回復して上昇トレンドを継続するとき
- 上昇トレンドにある株価が調整で下がったが移動平均線を下回らず、再び上昇するとき
- 下降トレンドの移動平均線から大きく下へ急落した後にリバウンドが予想されるとき
売りのタイミングとして注目したい4つのパターン
- 株価が移動平均線を上から下へと突破したとき
- 株価が一時的に移動平均線を割り込んだが、すぐに回復して下降トレンドを継続するとき
- 下降トレンドにある株価が上昇しても移動平均線を超えられず、再び下落するとき
- 上昇トレンドの移動平均線から大きく上へ急騰した後に調整が予想されるとき
グランビルの法則は、移動平均線を使って取引するときの基本となります。将来的に移動平均線を応用して取引する際、グランビルの法則は役に立つので覚えておきましょう。
移動平均線を使うときの注意点
移動平均線は便利なツールですが、使用する際には以下の注意点を考慮する必要があります。
● 必ず損切りをする
● 横ばい相場で機能しにくい
これらを理解しておくことで、より効果的に移動平均線を活用できます。
必ず損切りをする
移動平均線を使って取引をする際は、損切りすることも視野に入れてエントリーするようにしましょう。どのテクニカル指標にもいえますが、移動平均線でもダマシと呼ばれる偽シグナルが発生することがあるからです。
たとえば、ゴールデンクロスが出たのに相場が上昇せず下落したり、デッドクロスが出たのに相場が下落せず上昇したりすることがあります。株価は需要と供給で動くため上記のようなダマシは回避できません。そのため、株を買う前に「特定の価格まで下落した場合は損切りする」という明確なラインを決めておくようにしましょう。大きな損失を回避するためにも、損切りは徹底するのがおすすめです。
横ばい相場で機能しにくい
移動平均線は、横ばい相場では誤ったシグナルを発生させやすい弱点があります。相場が一定の範囲内で上下動を繰り返す横ばい状態では、移動平均線は頻繁に上下するため、トレンドの転換点ではないのにゴールデンクロスやデッドクロスが多発します。
これらのシグナルに従って取引を行うと、損失を重ねる可能性が高くなります。そのため、移動平均線を利用して取引する場合、トレンド相場なのかレンジ相場なのかを見極めて移動平均線を使うようにしましょう。
まとめ
今回は、移動平均線の見方について解説しました。移動平均線は相場の短期的な価格変動を平滑化し、トレンドの方向や勢いを可視化できる便利なツールです。移動平均線の向き、傾き、株価との位置関係を理解することで、相場の状況を的確に判断できるようになります。また、ゴールデンクロスやデッドクロス、グランビルの法則などを活用すれば、具体的な売買タイミングの判断にも役立てられます。
ただし、ダマシには注意が必要であり、特に横ばい相場では誤ったシグナルが出やすい点に留意しましょう。移動平均線を効果的に活用するためには、相場状況の見極めが重要です。この記事で解説した知識を実際のチャート分析に活かし、投資の精度向上に役立ててみてください。
※投資は、お客様自身の判断と責任において行ってください。