資産運用を始める際、多くの方が耳にするであろう「S&P500」。後述にて詳しく解説しますが、この「S&P500」とは米国の主要500社の株価をもとに構成された株価指数で、米国経済の動向を示す指標としても機能しています。また、この指数に連動した投資信託などは、初心者にも人気の投資先のひとつとなっています。
本記事では、S&P500の基本的な仕組みや特徴、そもそも指数とはどのようなものなのか、S&P500のメリットや具体的な投資方法をわかりやすく解説します。資産形成の第一歩を踏み出したい方や長期運用を目指している方は、ぜひご覧ください。
S&P500とは?基本の仕組みを簡単に解説

S&P500 ダウジョーンズインデックスファクトシート(2025年1月31日更新)より当社作成。
S&P500は、アメリカの主要企業500社の時価総額をもとに加重平均して算出される株価指数です。株価指数とは、市場全体の値動きを示す指標のことを指すため、S&P500はアメリカの株の値動きに連動しており、米国経済全体の動向を把握する指標として多くの投資家から支持されています。
以下では主にS&P500において、上位を構成する5つのセクターについて解説します。
具体的な構成銘柄にも触れることで、S&P500の理解度を高めましょう。
・情報テクノロジー(Information Technology):ソフトウェア、ハードウェア、半導体、ITサービスなどの関連企業が分類されます。企業技術革新、景気循環などの影響を受けやすい点が特徴です。
主な企業: Apple、NVIDIAなど
・金融(Financials):銀行、保険、資産運用、決済サービスなどを提供する企業が分類されます。FRB(米国中央銀行制度の最高意思決定機関)の政策金利によって影響を受けやすく、金融サービスとITを結びつけたさまざまな革新的取り組みである「フィンテック」分野の成長も注目されます。
主な企業: JPMorgan Chase&Co、Goldman Sachsなど
・一般消費財(Consumer Discretionary):個人や企業が日常で購入する製品やサービスを提供する企業が分類されます。飲食チェーンからeコマースまで、特に身近で多様な企業があり、景気動向に直接的な影響を受けます。
主な企業: Amazon.com、McDonald’s、NIKE、Starbucksなど
・ヘルスケア(Health Care):製薬、医療機器、バイオテクノロジー、ヘルスケアサービスなど、医療関連の企業が分類されます。景気循環などの影響を受けにくく、いわゆるディフェンシブ銘柄ともいわれます。
主な企業:Johnson & Johnson、Pfizerなど
・通信(communication service):インターネット、メディア、エンターテインメント、通信インフラなどを提供する企業が分類されます。特にデジタル広告やストリーミング動画が重要な成長分野となっています。
主な企業:Alphabet、Meta、Walt Disney、Netflixなど
アメリカを代表する株価指数
S&P500の構成企業は、アメリカのニューヨーク証券取引所やNASDAQに上場する主要企業から選ばれています。この指数には、IT、金融、ヘルスケア、消費財など多岐にわたる産業が含まれ、アメリカ経済の幅広い側面を反映しています。
例えば、アップルやマイクロソフト、アマゾンといったテクノロジー企業のほか、ウォルト・ディズニーやジョンソン・エンド・ジョンソンといった有名企業も含まれている点が特徴です。
そのため、多様性と安定性を兼ね備えた指標として、投資家から高い評価を得ています。S&P500は、全体の市場規模を時価総額加重平均方式で算出するため、規模の大きな企業ほど指数に与える影響が大きくなります。
S&P500が誕生した背景
S&P500は、1957年にスタンダード&プアーズ社(現在のS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス)が発表しました。それ以前の代表的な指数であったダウ平均は、30社で構成されていましたが、より包括的な市場指標が求められるようになったのが誕生の背景です。
さらに、アメリカ経済が多様化し、業種や企業規模の異なる多くの企業が台頭した背景を受けて、500社を対象にしたS&P500が開発されました。この新しい指数は、市場全体をより正確に反映するものとして注目され、現在に至るまで人気を誇っています。
世界中の投資家が米国市場の動向を知るための重要な基準として現在まで長く活用されており、多くの金融商品や投資信託の参考指標となっています。
S&P500の構成企業や選定基準
S&P500は、前述のとおりアメリカの500の主要企業で構成されており、その選定には以下のような厳密な基準が適用されている点が特徴です。
- 最低130億ドル以上の時価総額を有すること
- 十分な流動性を持つこと
- 米国本社であること
- 過去の業績が安定しており、持続的な収益性が確認されること
これらの条件を満たした企業の中から、S&Pダウ・ジョーンズ社の委員会が業種バランスや市場代表性を考慮して選定を行います。
このような厳格な選定基準により、S&P500は多くの投資家から信頼される指標として高い知名度を誇っているのです。
S&P500に投資する3つのメリット
S&P500への投資にはさまざまなメリットがあるため、多くの人に選ばれています。ここからは主なメリットを3つ挙げて詳しく解説します。
長期的に安定した成長が期待できる
S&P500は、過去のデータから年平均7〜10%の成長が見込まれる指数です。この成長率はアメリカ経済の堅実な発展を反映しており、インフレを上回るパフォーマンスが期待できます。
さらに、長期的に運用することで複利効果が働き、資産を効率的に増やすことが可能です。例として、年間7%のリターンを複利で運用した場合、10年後には元本が約2倍になる計算です。
特に、アメリカは世界経済の中心的存在であり、その影響力がS&P500の安定性をさらに高めています。安定した成長が期待できるS&P500は、投資信託やETF(上場投資信託)を通じて活用され多くの投資家が支持しています。
分散投資でリスクを軽減できる
S&P500は500社の企業で構成されており、セクターや業界が幅広く分散されている点が特徴です。株式投資におけるセクターとは、業界別に分類したものを指します。そのため、特定の企業やセクターが低迷した場合でも、他のセクターがその影響を緩和します。
このリスク分散効果により、初心者でも投資リスクを抑えた運用を実現しやすい点が魅力です。例えばITセクターが不調でも、ヘルスケアや日用品メーカーなどの企業が安定的なリターンをもたらすケースが多くみられます。
アメリカ経済全体をカバーする幅広い分散投資を、1つの指数で実現できることがS&P500の大きな魅力といえます。
コストが低く手軽に投資できる
S&P500への投資は、インデックスファンドやETFを利用することで、誰でも簡単に始められます。これらの商品は運用コストが低いため、年率0.1%程度の手数料で運用できる点が魅力です。さらに、少額からの投資が可能で、初心者でも始めやすいです。
より低コストで資産運用を始めたい方は、ネット証券を活用することをおすすめします。投資信託やETFなどの豊富な選択肢とネット証券を活用した手軽さが、S&P500を多くの人にとって身近な投資対象にしています。
S&P500に投資する際の注意点
S&P500は魅力的な投資先ですが、注意すべきリスクも存在します。注意点をしっかりと把握して、適切な対策を講じることが大切です。
為替リスクが存在する


S&P500はアメリカ株式市場を対象とした指数のため、ドル建てで運用されます。そのため、日本円で投資する際には為替リスクが伴う点がデメリットです。具体的には、円安時に投資を始めれば、為替差益で運用成績が向上しやすい一方で、円高に転じた場合は株価で運用益があっても総合的には損失を受ける可能性があります。
特に為替相場は、経済状況や政策金利の変動などの影響を受けやすいため、注意が必要です。為替リスクを軽減するためには、為替ヘッジ付きのインデックスファンドを選んだり円高時に資金をドルに移したりするなどの対策が効果的です。ただし、為替ヘッジをすると円安になった際に為替差益を享受できないケースがあるので注意しましょう。
短期的な市場変動に注意する
S&P500はこれまでの推移から長期的には安定した成長が期待できますが、短期的には市場の乱高下が発生することがあります。
例えば、経済指標の発表や金融政策の変更、世界的なイベント・リスクなどによって、大きな値動きが起きかねません。このような短期的な変動に翻弄されると、焦って売却して損失を出してしまう可能性があります。
そのため、S&P500への投資は長期投資を前提とすることが一般的です。時間を味方にして複利効果を活かすことで、過去実績ベースでは10年間の運用で資産を大幅に増やすことも可能でした。
米国市場に依存するリスクを把握する
S&P500はアメリカの主要企業で構成されているため、アメリカ経済全体のリスクに強く影響を受けます。例として、リーマンショックのような金融危機や新型コロナウイルスの流行による経済の停滞などが発生すると、S&P500全体に悪影響が及びます。
こちらのリスクを回避するには、他国市場への分散投資を行うことが重要です。具体的には全世界株式に投資するファンドや、新興国市場を対象としたETFを活用することで、アメリカ市場への依存リスクを軽減できます。
分散投資によって安定したポートフォリオを構築し、長期的なリスク軽減を目指すことが重要です。
S&P500への投資方法をわかりやすく解説
最後に、S&P500の投資方法として、インデックスファンドやETFの活用方法、証券会社選びのポイントについて、具体的にご紹介します。
インデックスファンドを活用する
S&P500に投資する最も手軽な方法の1つが、インデックスファンドを活用することです。インデックスファンドは、特定の指数に連動した運用を目指す投資信託で、S&P500を対象とした商品もその一例です。信託報酬(管理費用)が低いものが多いため、コストを抑えながら分散投資することが可能です。
また、数百円から投資できるため、資金が少額でも分散投資が実現します。代表的な商品として「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」や「楽天・全米株式インデックス・ファンド」が挙げられます。こうした商品はネット証券で簡単に購入でき、自動積立設定の活用も可能です。
ETFを利用して投資を始める
ETF(上場投資信託)は、取引所で売買できる株式型商品で、S&P500に連動するものも数多くあります。代表的なETFは、SPY(SPDR S&P500 ETF)やVOO(Vanguard S&P500 ETF)が挙げられます。ETFの魅力は、株式と同様にリアルタイムで価格が変動し、好きなタイミングで購入や売却ができる点です。
ETFは投資信託と比べて運用コストが低いものが多く、長期保有に適しています。長期的に運用することで、複利効果を活かした資産形成が期待できます。なお、ETFを通じて複利効果を活かした資産形成を行うためには、自身で配当金を再投資することや、証券会社の自動再投資サービスを利用することがおすすめです。また、分配金を出さずに内部で再投資する「無分配型のETF」を選ぶこともひとつの方法といえるでしょう。
手数料の低い証券会社を選ぶのがおすすめ
S&P500への投資で重要なポイントは、手数料の低い証券会社を選ぶことです。取引手数料や管理料が高いと、その分リターンが目減りするため資産形成が鈍化します。
SBI証券や楽天証券はインデックスファンドやETFの取引手数料が低いため、初心者にも人気があります。さらにキャンペーンやポイント還元を実施している場合もあり、お得に投資を始められる点も魅力です。
口座開設時には、手数料(取引手数料や信託報酬)や取引ツールの使いやすさ、キャンペーン内容などを比較し、自分に合った証券会社を選ぶことをおすすめします。
S&P500を理解して資産形成に役立てよう
本記事では、S&P500の基礎知識や魅力、注意点、投資方法などを詳しく解説しました。S&P500の魅力は、安定した成長が期待できることやリスク分散効果、低コストで手軽にはじめることができる点にあります。
一方で、S&P500に対する投資はアメリカを拠点するリーディングカンパニーへの株式投資であり、付随する投資リスクとして、為替リスクや国際的な政治経済の動向、企業の業績動向などに応じた価格変動リスクなどがあります。また米国市場への依存という点でも注意が必要といえるでしょう。
これらのリスクや注意点を理解し、為替ヘッジや分散投資など具体的な対策を講じることが重要となります。
S&P500に関する正しいリスク認識と具体的な対応策を学び、長期的な資産形成を目指してみましょう。